6月の理事会

 今月もZoomによるオンライン会議でした。当分この状態が続きそうです。

 今回は ・カード配布の打ち合わせ ・公開講演会の反省(受付の省略、急な雷雨や録音の対応など)・7月発行の広報誌について、特に時間をとって話し合われました。

 効率よく話し合いが進み、予定を30分以上早く終了しました。

故・伊達悦子先生(元顧問)

 5年前の2016年6月3日、元作新学院大学教授伊達悦子先生が、癌のためご逝去されました。伊達先生には長くチャイルドラインとちぎの顧問をつとめていただき、たいへんお世話になりました。感謝いたします。

 伊達先生は日本大学文理学部心理学科を1067年に卒業され、長野県の児童相談所に心理判定員として奉職されました。その後1969年に栃木県の児童相談所に移り、以来 県立保育専門学院を経て、作新学院女子短期大学講師、付属幼稚園園長、そして作新学院大学および大学院教授となられ、臨床心理・児童福祉の分野で研究・実践に熱心に取り組まれ、後進の育成にも尽力されました。大学に開設された相談室でも現場にたたれ、合間に各所で講演・研修の講師をつとめるという、たいへん多忙な日常だったそうです。

 そんな輝かしい功績を残された伊達先生の印象は、いつも「真摯でおだやか」でした。

 伊達先生がまだ体調を崩される前のことです。ある年の2月の水曜日、県の精神保健福祉センターで、県内で電話相談にあたる様々な団体の相談員合同の研修会があり、チャイルドラインとちぎからも私を含め数名が参加しました。この時の講師が伊達先生でした。

 そのちょうど一週間後、伊達先生を講師として今度は別の団体の主催で、社会的養護にかかわるアドバイザーについての研修会がありました。県庁の一室で行われたその研修には、各市町村の福祉担当者、児童相談所職員、養護施設職員、里親などが大勢参加していました。この研修も前週の合同研修も対象者が電話相談員かアドバイザーかの違いで、どちらもテーマは「相談を受けるときの心構え」でした。配布されたレジメは、「同じテーマで研修を依頼されても、レジメの使いまわしはいたしません。その団体に合うようにその都度書いています」という伊達先生のお言葉通り、前週の研修の時とは違うものでした。ですが、講義の内容もレジメも、前週の研修とかぶる箇所がいくつもありました。

 最後の質疑応答の時に、私は手をあげました。まず私は前週の合同研修会にも参加していて、そのときのお話も今回も具体的でわかりやすくいいお話をありがとうございました、とお礼を申し上げました。伊達先生は、「まあ」とにっこりほほえまれました。そして「アドバイザーであっても電話相談員のように、相手の気持ちに寄り添う細やかな配慮が必要なのか」ということを質問しました。アドバイザーというと、たとえば消費生活アドバイザーのように、利用方法や詳細がわからないときにそれを問い合わせると教えてくれる人、助言をしてくれる人というイメージでした。そのせいか、もっと事務的な対応が求められたり正確さが重視されたりするのかな、という先入観があったのです。

 私がしゃべり終える前に、伊達先生はまたにっこりほほえまれ大きくうなずきながらマイクを手に取りました。そして次のような答えをいただきました。「相談室に電話をかけてくるのは、困ったことがあるから、悩んでいることがあるから。相手が困っている、悩んでいる、ということは、相談員にとってもアドバイザーにとっても同じで、まずその気持ちを受け止めることが大切なのです。」

 それが、私が拝見した伊達先生の最後のお姿でした。質問を通してのこととはいえあの時伊達先生と言葉を交わせて本当によかった、としみじみ思います。日本には一期一会という言葉がありますが、一回の出会い、一瞬のチャンスを大切にしたいものだとまさにそれを実感したのでした。

 伊達先生のご冥福をお祈りいたします。

養成講座・継続研修を行いました

6月13日、第2回・3回目の13期生養成講座を午前、午後に分けて行いました。

前半のテーマは「チャイルドラインについて」
理事長が講師となり、チャイルドラインのこれまでの歩みや、活動について、子どもへの約束、子どもたちの現状など話しました。
13期生の皆さん全員が真剣に聞き入っていました。

後半は、受け手継続研修も兼ねているので、約30名での研修となりました。テーマは「傾聴の基礎①」~心の密を体験しよう~

講師は福本佳之さん (一社)日本青少年育成協会 主任研究員

「きく」だけでもでも「訊く」「聞く」「聴く」の3つもあるんですね。「聴く」大切さを感じた研修でした。

感染対策のため距離をとっての2人組のワークも行いました。実際に話したり聴いたりワークをすることで、「心の密」を体感することができました。聴いてもらうってやっぱり嬉しい!と感じた「チャイルドラインとちぎ」らしい、あたたかいほっこりとした研修でした。

LGBTQ

タイトルの「LGBTQ」という言葉もずいぶん市民権を得てきたような気がします。

でも、気がするだけかも・・・自身の性への違和感、いわゆる普通の人たちの中に入れないなあ・・と思う気持ちの揺れ、自分のことだってわからないのに、他人様のことなんてわかると思うのがおこがましいのかもしれない。

本日のNHK、あさイチ「SHELLYと語ろうLGBTQ」に浅沼智也さんが、当事者として出演されていました。浅沼さんとは2019年に栃木県精神衛生協会が主催したメンタルヘルス講座で初めてお会いしました。講師として招かれていたのです。浅沼さんは出世時に判断された性と自認が一致せず、医学的処置も続けていらっしゃいます。性的マイノリティーの人権について啓蒙活動を続け、「ここまで書いちゃう?」と赤裸々に自身の体験をつづられた著書を読んだときは衝撃を受けました。

今日の浅沼さんは、レインボーカラーのマスクをつけ、目力際立って素敵でした。ジェンダーに関心深いSHELLYさん、松中権さん、山本そよかさん、浅沼智也さんがそれぞれの思いを語ってくださいました。

「自分が存在していいのかなあ・・と考えていた」・・・浅沼さんの言葉。心にズシンと応えました。周囲の人の言葉から、こんな風に考えてしまう子たちが少なからずいます。

表現の自由は、だれにでも与えられた権利ですが、言葉は時に武器となります。なにげない一言、良かれと思った言葉、発してしまったものはもう消すことはできない。とくに、他人のことを勝手に発言したり、暴露するアウティングは恐ろしいものである・・チャイルドラインは言葉を使って活動しています。気を引き締めないと!と改めて感じた朝でした。

記念誌制作の思い出

 先日の公開講演会(ネット依存から子どもを救え)で、チャイルドラインとちぎ20周年記念誌が参加者全員に配布されました。私たちの活動を知っていただく一助となれば、幸いです。

 この記念誌制作はコロナ感染拡大の影響で外出自粛の中、実際に集まっての作業は最小限にとどめ、現代文明の利器オンラインのネットワークを利用しての完成でした。表紙のイラストは、画家でもある理事長の手によるものです。

 10年ひと昔といいますが、10年前の10周年の時にも、もちろん記念誌を発行しました。この時は初めての記念誌制作ということで、大勢の記念誌スタッフが何度も事務所に集まり、ワイワイガヤガヤ、時には険悪な空気を漂わせながら喧々諤々と意見を出し合い完成した、まさに血と汗と涙の結晶でした、あ、さすがに血は流してはいませんが(笑)。その時の表紙のイラストを描いたのも理事長でした。

 そして、記念誌のところどころにカットを描いてくださった、セミプロイラストレーターの方のことを、私たちは忘れません。それは、10周年当時、私たちチャイルドラインとちぎと同じ事務所で活動していた、宇都宮子ども劇場のM.Sさんです。

 そのカットはどれもやさしいタッチで、チャイルドラインの雰囲気をよくあらわしていました。M.Sさんはすべてのカットを無償で描いてくださいました。その後、それらのカットはすべて画像データ化され、チャイルドラインとちぎのパソコンに保存されています。10年の時を経て、今回の20周年記念誌、リニューアルしたホームページの各所にも使わせていただいています。M.Sさん、本当にありがとうございます。

 チャイルドラインとちぎは多くの方の暖かい心遣いによって、支えられています。

M.Sさんのイラスト

公開講演会がありました

 5月31日、以前このブログでもご案内しました公開講演会「ネット依存から子どもを救え」がとちぎ健康の森にて、開催されました。

 講師の遠藤美季氏は、「エンジェルアイズ」というネット依存の予防啓発団体を主催され、情報提供や相談を受けられています。

 今までもネットのかかわる犯罪やトラブルについての講演はありましたが、今回のように「ネット依存」に焦点を当てた内容はチャイルドラインとちぎでは初めてで、新鮮でした。ネット依存の現状や原因、そしてその対応策など、具体的でわかりやすいお話でした。

 なぜネットにのめり込むのか…コンテンツ自体が面白いという部分もあるのは確かだが、大きな原因として、現実の生活では満たされない、現実逃避、承認欲求や仲間意識などがあげられる。そしてそれは子どもだけではなく、同じように悩んでいる、病んでいる大人も多い。ネット依存に陥らないためには、ネットとの上手な付き合い方を見つけること、リアルな生活を充実させることが大切…だということです。

 今回の講演でとてもよかったと思うのは、具体的な対応策が聞けたことでした。といってもそれに対する万能薬があるわけではなく、「いろいろなケースがあり、いろいろな対応策があり、それぞれに合った対応策がある。」ということです。そういう対応例を知ることができただけでも、たいへん心強いことだと思います。

 遠藤氏はもともとはココロ系の人ではなく、パソコンのインストラクターをされていたそうです。ご自身が実際にネットとかかわられてきただけに、現実的で具体的なお話をしていただくことができたのでしょう。

 今回は92名が出席。半数以上が外部からの参加者でした。このテーマに対する世の中の関心の高さがうかがえます。それはまた、ネット依存で悩んでいる方も多いということの現れかもしれません。

 エンジェルアイズのホームページは、ネット依存の問題に関心のある方、実際に悩んでいる方の参考になると思います。