いちごのエレベーター

いちご、いちご、いちご!

迫ってくるいちご!さすが、いちご王国ねぇ。

みなさん、栃木県庁のいちごのエレベーター知ってますか?

県庁のいくつかあるエレベーターの一つに、それはある。壁全面にいちごの絵がプリントされている。県庁の1階のロビーは、イベントがない限り、人の出入りはまばらだ。2階から上には、平日何百人の人が働いているのに、ロビーや通路には、その気配は感じられない。

1階で、そのいちごのエレベーターに乗った時の話だ。私より先の乗客はおらず、操作盤に立ったとき、こちらに向かって駆けてくる親子を見つけた。

先頭は5歳ぐらいのお兄ちゃん。次に20代前半の若いママ。そして、2歳か3歳ぐらいの弟くん。男の子たちは兄弟のようで、おそろいのインディゴのジャケットを着ていた。若いママは、北欧っぽい模様の入ったニット帽をかぶっていた。そのカラフルなニット帽には耳当てがついていて、耳当てからひもがたれていた。茶色に染めたボブヘアに、よくそのニット帽が似合っていた。

若いママは、前に行くお兄ちゃんを確認しながらも、しきりに後ろの弟くんを気にしていた。きっと抱っこしてしまった方がママにとっては楽だけど、弟くんの方は、長いドライブのあとで、歩きたくて歩きたくて、抱っこさせてくれないのね、と思いながら、待っていた。

エレベーターに一番に飛び込んだお兄ちゃん。入った瞬間、両手を宙に伸ばして、手を前後に動かして、壁のイチゴをぱくぱくぱく。(かわいい!)

ママがエレベーターの前で弟くんを見守る中、弟くんようやく到着。弟くんもまた、イチゴをぱくぱくぱく。(これまたかわいい!)

ほっとしたママが乗ったところ、すかさずお兄ちゃんが、「ママも!」

そして、その言葉に応じて、瞬時にママも、両手を宙に伸ばして、イチゴをぱくぱくぱく。(すてき!)

お兄ちゃん、弟くん、ママの3人の動作がそっくり同じなのがおかしかったのと、微笑ましいなぁと思いつつ、エレベーターの隅で、一部始終を見てたのだった。

若いママは、イチゴを食べたところを見られたのが恥ずかしかったのか、照れくさそうに、気まずそうにこちらをみていた。

そこで、私が、お兄ちゃんの方を向いて、「おいしそうなイチゴねぇ。」と声をかけたところ、お兄ちゃんは、嬉しそうににっこりしてくれた。若いママも、私が声をかけたことでほっとしたような表情をしていた。

私の方は、親子のほっこりとした様子にうれしくなり、胸の中がほっこり。

それから、県庁のいちごのエレベーターに乗るたびに、あの親子のことを思い出す。きっと今もほっこりと暮らしているのね。

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