栃木県栃木市にある萬福密寺には三体の鬼の像が祀られております。真ん中の青鬼は鎖で縛られているのですが、こんな民話があるのです。
昔々ある冬の晩、お寺のそばの酒屋に大男がやってきて「酒をくれ」と大きな徳利を出しました。酒屋の主人があふれるほど酒を注いで渡すと、大男は小銭を置いて暗い夜道に消えていきました。あくる朝、主人がその小銭を確かめると木の葉に変わっていました。次の晩もその次の晩も同じことが起きたので、主人はこっそり大男の後を付けました。しかしお寺の境内で大男を見失ってしまいました。主人はお寺の住職に相談しました。そして調べてみると三鬼堂の赤鬼・青鬼・黒鬼のうち真ん中の青鬼が酒臭いのです。そこで酒屋の主人は近所の男たちの力を借り、お堂に上り青鬼を鉄の鎖で縛ってしまいました。それから、酒屋に大男が現れることはなくなりました。 (当山に伝わる下野民話)
絵を描きに行くため、お寺に伺い、ご住職からいろいろなお話をお聴きしました。歴史のあるお寺で、小中学校の生徒たちが総合学習や遠足で訪れることも多いそうです。そんな時、ご住職は寺の歴史やこの民話を聞かせて子どもたちからもいろいろ話を聴くそうです。
そしてこんな質問をしたりするとか・・「みなさんは、本当にこの鬼が動き出したと思いますか?」子どもたちは「そんなはずないよ!」と。「では、この話はどういうことなんだろうねえ?」「・・・」
本当に酒屋をだますどろぼうもいたのかもしれない。でも、青鬼さえ縛られるのをみて、泥棒は悪事を控えるようになったのかもしれない。これは昔の人の知恵の話なのかも・・と、こんな話をしたりするんですよ、とご住職は優しく話してくださりました。
寺子屋という言葉が頭に浮かびました。寺子屋は中世の寺院での学問指南が起源のようですが、江戸時代のそれは、僧侶が教育を施すわけではありません。でも、お寺は子どものみならず近隣の大人たちの信仰や知恵のよりどころでもあり、こういう場所は大切なものだなあと感じました。
チャイルドラインの活動にも通じる何かをいただきました。
なお、このお寺には私が大好きな画家、田中一村のお墓もあるのです。もちろんお参りして帰りました。・・絵がうまくなりますように。田中一村は奄美の絵が有名ですがなんと栃木の生れなのです。
まつりん