小さな命のコンサート

 太陽が西の山並みに沈み、薄暮から夜へとあたりが暗くなるころ、この時期、我が家ではささやかなコンサートがくりひろげられます。ステージは我が家の庭。演奏するのはカエルたち。
 まずは“グァッ、グァッ、グァッ…”とメインボーカルの声。続いて“ケロ、ケロ、ケロ…”とバックコーラスが花を添えます。まさに、童謡の「かえるのうた」そのものです。カエルたちは、元気よく、のびのびと歌います。まるで「生きているのがうれしいんだ」といわんばかりに。聞いているこちらまで気分がよくなってきます。若い男の子たちのアイドルグループ、というイメージでしょうか。

 夏休みが始まるころには、いよいよ夏の風物詩、セミの大合唱です。さながら炎天下のロックコンサート、とてもパワフルでエネルギッシュ(というか、ハッキリ言ってやかましい)です。人間なら、思わずスポーツタオルを振り回して共感の意を示すところでしょう。でもその前に、熱中症で倒れる人続出、病院送りになりそうな。
 アブラゼミ、ミンミンゼミから始まったコンサート、ヒグラシがメンバーに加わる頃になると、そろそろコンサートはエンディングです。

 涼しい風が吹くころになると、今度は虫たちの登場です。スズムシ、コオロギ、クツワムシなど、素敵なアンサンブルを聞かせてくれます。心地よい、鈴の音のような響きに癒されます。

 やがて地上は寒く厳しい冬を迎え、野外コンサートはしばらく休止です。この期間に、小さな生き物がまたコンサートをひらけるように、人間は会場整備(お庭のお手入れ)にいそしむことにしましょうか。

 そして春がめぐって来ると、聞こえてくるのが、野鳥の歌です。これは我が家が田舎だからなのですが、庭にやってくるのはお馴染みのスズメやオナガ、ヒヨドリ、セキレイ、メジロなど。
 とっても、かなり、ものすごく、運がよければ、なんと!ウグイスの鳴き声を聞くこともできます。ここで一句詠めたら最高なのですが、あいにくそのような才能もセンスも無く…涙。
 それから、空高く舞いながらさえずるヒバリ。ひときわ高いところ(電線)でコロラチューラ・ソプラノのような声を響かせてくれるカワラヒワも、まるでオペラのアリアを歌っているようです。(と、書きましたが、実はさえずるのはオスのみらしい?)

 こうして野鳥たちのステージがクライマックスを迎えると、まもなくカエルたちの出番がめぐってきます。

 ささやかな、小さな命のコンサートは、自然の豊かさ、平和のありがたさをしみじみ感じさせてくれるひとときです。感謝。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です