ブン太くんに叱られた

これは数年前、私が東京へ遠距離通勤していたころのお話(実話)です。

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当時の職場は、我が家から電車で1時間半はかかる場所だった。しかし不幸中の幸いとはこのことか。乗り換えなしの1本で行けたし、行きも帰りも始発に近い駅から乗れたので、適度な揺れが心地よく、特に朝は睡眠不足を解消するちょうどよい時間だった。眠っていない時は、スマホでニュースを見るか、音楽を聞いていたりした。

ある日、私はふとしたきっかけで、こともあろうにスマホのゲームに手を出してしまった。ほんの暇つぶしのつもりだったのが、はまってしまった!! ステージクリアしたときには、日常生活で久しく体験していなかった達成感を味わい、ミッションを攻略してアイテムを手に入れるのも面白く、子どもたちが熱中するのもよくわかった。そして、家にいるときも時間があれば、ゲームをするようになってしまった(けれど、そこはいい年齢をした大人、さすがに羽目をはずすところまではいかなかったけれど…と、自己弁護)。

ある日曜日の昼下がり、私はリビングでゲームを始めた。ここで登場するのが我が家の愛犬ブン太くん、スパニエルの男の子、5歳である。ブン太くんは私に向かってさかんに吠えている。「どうしたの? 庭にネコでも来たのかな? 誰もいないよ」 ちょっとなだめてまたゲームに戻る私。「ちょっと待ってて。今大事なところなんだから」 マテをさせてもすぐにまた吠え始める。何か怒っているようだ。「ブン太! 静かに!」。どうやら私がゲームを始めると、吠え始めることがわかった。

ワン、ワンワンワン、ウ“~ワンワン(※ブン太の心の声:何しとんのや、オカン。ゲームなんかやったらアカン。はよ、やめい!ゲームはオワリや!)

しかし、ゴールまであとちょっと、ここで引き下がるわけにはいかない。オバサンのプライドがゆるさない。

そこで私はスマホを持って2階の子ども(もう家を出て自立している)の部屋へ行った。そしてベッドに寝転がり、続きをやった。ほどなく無事に攻略。欲しかったアイテムを手に入れて今日の目標は達成、ここでゲームをやめた。

そして、思った。うちの子もこんな感じでゲームをやっていたんだなあ、と。リビングのソファでテレビをかけながらゲームを楽しんでいるときに、「いつまでゲームやってるの! ちょっとは勉強しなさい! そんな時間があったら部屋を片付けなさい!」と言われ、スマホを持って2階の自分の部屋へ消えていった我が子。ゲームが悪いなんて言っていない。ただ、けじめをつけてやってほしかっただけなのに。

ブン太くんに叱られて、私は我が子の気持ちがよーくわかった。

でもね、いくら気持ちがわかったと言って、「いつまでも好きなだけゲームやってていいのよ。朝起きられなくたって、学校休んだってかまわないよ。」なんて、やっぱり私は言えない。それが親というものではないだろうか。

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さて、ブン太くんに叱られた真相は…

ブン太は私がゲームをしていることを怒ったのではなく、私がスマホを手に楽しそうにしているのを見て、ヤキモチを妬いたのでしょう。「そんなヤツをかまっとらんで、ワシと遊んでよ」と言っていたのだと思います。もちろんその後、キャッチボール(ボールを投げて”持ってこい”)をして遊んであげました。

※ブン太は関西出身。心の声は、「方言・関西弁変換ソフト」を使用しました。

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