殺生石~呪いの真相~

栃木県北部の那須高原に、「殺生石」と呼ばれる史跡があります。国の名勝に指定され、栃木県指定文化財にもなっています。

「殺生石」には、平安時代の終わりごろ、九尾の狐という尻尾が9本ある妖怪が悪行をはたらいたため、陰陽師阿倍泰成により都を追放され、逃れてきた下野の国(しもつけの国:栃木県)那須の領主らに退治され、その死骸は石になった、その石が毒気を放出して近づく生き物を殺したため「殺生石」と呼ばれるようになった、という伝説があります。

今月7日、その近くでイノシシ8匹の死骸が発見されました。ここで思い出されるのが、上記の伝説ですが、真相は、地面から発生する毒性の強い硫化水素を吸い込んだため死んだ、とみられています。この付近は実は火山地帯(那須岳=茶臼岳とも言う)で、常に硫化水素が発生しています。温泉の匂いの、アレですね。

ですが、科学が発達していない昔は、こういった出来事~何か良くない事~が起こると、誰かの祟りや呪いのせいだとと考えられていました。その結果、何のかかわりもない人々が無実の罪をきせられ、犠牲にされたというむごい史実があります。有名なところでは、中世ヨーロッパの魔女狩り、あれも似たようなものではないでしょうか。

恐ろしい事件や不可解な異変が起きた時、恐怖や不安を感じるのは普通のことです。ですがほとんどの場合、ちゃんとした根拠、原因があるものです。こんな時こそ落ち着いて、冷静な目を持って判断できるような人間になりたいと思います。

そういえば今年3月、その殺生石が真っ二つに割れるという現象が起きました。この時は、劣化とか、もともとひびが入っていたとか、石内部に含まれていた水分が膨張して破裂したとか、いろいろ言われていましたが、単なる自然現象にすぎなかったようです。 巷では、九尾の狐の呪いが解き放たれた、などとちょっとした話題になっていたようですが。

地元・那須町ではこの物騒な伝説を逆手にとって、毎年5月に「参加者は全員狐のお面をかぶらなければいけない(またはフェイスペイント)」というお祭り「御神火祭」、7月には狐にちなんだイベント「那須九尾まつり」があります。こちらは、なんだか楽しそうですね。人間の知恵はすごいです。

なお、殺生石付近には遊歩道が整備されています。発生している硫化水素は、通常は、生命に危険が及ぶほどの濃度ではありませんが、毒性があることには変わりありませんので、気を付けて散策してくださいね。

(ハンドルネーム Iris)

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