親しき仲にも礼儀あり

最近、野生の熊が市街地に降りてきて、人間を襲ったというニュースをよく耳にします。山のドングリが不作で、食べ物を求めてやってくるそうです。

熊との遭遇ではありませんが…これは、うちの子が、まだ小学校低学年だったときのお話です。

我が家は、農村部に点在する住宅地にあります。東京近郊の、よくある田舎の風景を思い浮かべてもらえればいいと思います。

ある日、夫(つまりうちの子のお父さん)が平日休みで、雑草や庭木の手入れをしていました。刈り取った草木を軒先に置いておいたところ、なんとそこに狸の姿を発見したのです。珍しい来客に“いいオトナ”である夫は感激し、携帯で狸と一緒に記念撮影までしてしまいました。

それを学校から帰宅したうちの子に教えると、これまた大感激で、お友だちに電話をかけまくりました。「うちに狸が来たんだよ、すごいでしょ!!」と。新興住宅地に住んでいるお友だちは、「へえ、すごいね、いいな」とびっくりし、うらやましがったそうです。ですが農家のお友だちは、「ふーん、そうなんだ。でも狸、うちにも5、6回来たことあるけどね」とつれない返事で、得意げに電話したうちの子は拍子抜けしていました。(笑)

もともと動物好きのうちの子は狸と一緒に遊びたがり、せめて「父ちゃんみたいに狸と写真を撮るんだ!」「狸におやつをあげるんだ」と、草木に身を潜めた狸を誘い出そうとしていましたが、身の危険を感じた(?)狸は奥に引っ込むばかり。

見かねた私は、「狸さんは疲れているのよ、ゆっくり休みたいのよ。静かにさせてあげなさい。」と言って、うちの子を家の中に引っ張っていきました。しばらくして様子を見に行くと、もう狸はいなくなっていました。きっと、「こんな騒々しい家は嫌だ。もっと静かな家に行く。」と去っていったのかもしれません。

何にしても、ほどほどの距離感が大切です。それが野生動物と人間であっても。まして人間と人間ならなおさらでしょう。無償の愛を求めすぎて、それが原因で大切な人を失ったというのもよく聞く話。日本では昔から、「親しき仲にも礼儀あり」と言われてましたっけ。

さて、そのほどよい距離感をどうやって保つか…。つまるところ「思いやり」かなあ、と私は思うのですが、皆さまはいかがお考えでしょうか?

(Iris)

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